Sports Graphic Number

2008年4月 2日 (水)

『Sports Graphic Number』700号

表紙:イチロー(野球/シアトル マリナーズ)
特集:運命をめぐる物語 特別な一日。

 700号記念ノンフィクション特集と銘打って、アスリートにとっての特別な一日を特集しています。列記すると以下のとおりです。
○イチロー:'07.09.29・首位打者の可能性がなくなって涙を流した日
○三浦知良(サッカー/横浜FC):'98.06.05・フランスW杯落選の日
○山井大介(野球/中日ドラゴンズ):'07.11.01・日本選手権優勝決定試合で8回まで完全試合も降板した日
○安藤美姫(フィギュアスケート/トヨタ自動車):'07.03.24・世界選手権で優勝を飾った日
○武豊(JRA騎手):'06.12.24・ディープインパクトの引退レースである有馬記念で優勝した日
○吉田沙保里(レスリング/綜合警備保障)&山本聖子:'04.02.24・アテネ五輪代表を決するクイーンズ杯決勝の日
○中田英寿(サッカー):'01.05.06・中田所属のローマがユベントスを破り優勝をほぼ決めた日
○辰吉丈一郎(ボクシング/大阪帝拳ジム)&薬師寺保栄(松田ジム):'94.12.04・WBC世界バンタム級タイトル戦の日
 それぞれ感慨深いエピソードですが、今シーズン振るわなかった安藤美姫をピックアップしたのは、小生にとってはヒットでした。

 特集ではほかに、中綴じ形式で「ナンバーに刻まれた700の名言。」がまとめられていて、同様にナンバーの名言をとりあげている小生にはおもしろく感じました。

今号の名文
○カズがメンバーを外されるまで、日本サッカー協会には、「カズを外せ」というファックスが大量に送られてきていたという。しかし、この成田での会見をきっかけに、「なぜ外した」というファックスが来るようになり、ワールドカップで3連敗したあとには、その声が一層増えていた。
 文:一志治夫
○安藤は、ときに激しく熱い。安易に関われば火傷をする。だが、一方で、彼女は砂糖菓子のように脆弱だ。柔らかに触れないと崩れてしまう。とにかくアンバランスで、一筋縄ではいかないのである。>安藤美姫は、だから人を惹きつける。
 文:宇都宮直子

今号の名言
○「オレってどういう人間なんだろう。選択した道は正しい。でも、完全試合を途中で降りるなんて。しかも自分で申し出て。考えれば考えるほどわからなくなりました」
 '07年の日本シリーズについて 山井大介 文:阿部珠樹

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2008年3月10日 (月)

『Sports Graphic Number』699号

表紙:小椋久美子 塩田玲子(バドミントン 三洋電機)
特集:2008年の女子力。

 小椋久美子、塩田玲子、上田桃子(ゴルフ  ソニー)、浅尾美和(ビーチバレー ケイブロス)をはじめとする、女子の美人アスリートについての特集です。ときどきスポーツ界を斜めに見るこういった特集は、あまりツボを外すことが少ないので楽しみなのですが、まったく採りあげられなかった上村愛子(フリースタイルスキー 北野建設)が、出版直後にワールドカップ4連覇でモーグルの種目別総合優勝を遂げたのは、画竜点晴を欠いた感が否めません。
 茂木健一郎(脳科学者)、辛酸なめ子(コラムニスト)、生島淳(スポーツジャーナリスト)の鼎談では、アイドルではなく女子アスリートに清純さを求める、現代の日本人の傾向が明らかにされていて、おもしろく読めました。

 ナンバーノンフィクションでは、Jリーグ2nd div.の愛媛FCを舞台に、レンタル移籍を経て成長する選手たちを小齋秀樹が書いています。選手たちの苦労が伝わってきます。

今号の名文
○「優勝がすべてではないけど、出来なかったことは残念です。もっと準備が必要ですね」>準備。チャンスがめぐってきた時の準備。何が足りなかったのか。>「優勝した時、英語でスピーチする準備です」
 上田桃子がアメリカツアー2戦目、SBSオープンで最終日14番ホールで首位に並びながら、5位に終わったことについて 文:生島淳

今号の名言
○「今、自分が一番気にしているのは、2人とも同時にいいコンディションにすること。これはなかなか難しい。たいてい1人がちょっとよくて、1人がちょっと悪い」
 中島慶(バドミントン日本代表 三洋電機コーチ)文:田桑一
○「収入がないと生活できないですから。でも私が選んだ道。いろんな活動をしながらも結果も出す。卓球に関しては人より頭を使ってるつもりですよ。ない頭を(笑)」
 四元奈生美(東京アート)
○「スポーツ選手と芸能人との大きな違いは、どんなに人気があっても必ず引退するってことですよ。(中略)あらかじめ終焉の時が決められているがゆえの儚さみたいなものが、アスリートの魅力でもあるんでしょうね」
 茂木健一郎 構成:芦部聡

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2008年3月 9日 (日)

『Sports Graphic Number』698号

表紙:岡田武史(サッカー日本代表監督)
特集:新監督の本音を問う 岡田ジャパンに夢はあるか。

 日本代表を率いる岡田武史に焦点を当てています。まず本人へのインタビュー、それから彼に縁のあった人たちへのインタビューを通して、今後の代表の姿を浮き彫りにしています。

今号の名言
○「いま自分がわくわくするようなチームをつくっていく。そして成績を残す。それがサポーター、見る人を幸せにすることだと思う」
 岡田武史 文:藤島大

○「外国人監督の力は認めるんですけど、(通訳が入ることで)1時間で済む練習が1時間半か2時間かかるんですよ。それが無駄な時間じゃないかとずっと思っていたんです」
 談:風間八宏(サッカー解説者・筑波大学監督)

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2008年3月 8日 (土)

『Sports Graphic Number』697号

表紙:中村俊輔(セルティック)
特集:欧州チャンピオンズリーグ ビッグクラブ攻略論。

 中村俊輔所属のセルティックがFCバルセロナと対戦することになり、いかに挑むかを主題に記事が書かれています。結局セルティックはホーム、アウェイとも敗れ去りましたが、ほかのカードではACミランやレアルマドリーが破れ去っており、この特集は先見の明があったようです。
 以前のCL特集は、主題がはっきりしなかったのでおもしろくなかったのですが、最近は対象を絞っているので、そうでもなくなったように思いました。

今号の名文
○4年間で何も変わらなかったジーコがたった1年半で見違えるほど成長したのは、環境が大きく変わったからだ。わたしたち日本人は、ジーコを鍛えられなかったことを反省しなければいけないのだろうか。
 フェネルバフチェを率いて2年目のジーコについて 文:熊崎敬

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2008年3月 7日 (金)

『Sports Graphic Number』696号

表紙:岡田武史
特集:監督力

 岡田武史サッカー日本代表監督をメインに、野球、ラグビー、シンクロナイズドスイミング、競馬調教師といった各分野の監督の指導力をとりあげています。
 特に井村雅代(シンクロナイズドスイミング中国代表ヘッドコーチ)の記事では(文:松原孝臣)、中国を指導することになったいきさつなどが書かれていて興味深かったです。
 ただ前号のラグビー特集に続いて清宮克幸(サントリー サンゴリアス監督)を採りあげるのは、ちょっとくどい気がしますが。

今号の名言
○「みんな優秀だったけど、彼ら(注、歴代日本代表外国人監督)は大会が終われば国へ帰る。代表で取り組んだことに責任を持たなくていい。ボクは失敗しても、日本に住み続けないといけない」
 岡田武史 文:三浦憲太郎
〇「生意気なことを言わせてもらえば、王さんにしても(予選を)日本でやった。長嶋さんも日本でやった。オレらはビジターだ、アウェーだと。その違いはむちゃくちゃデカいと思った」
 星野仙一(野球日本代表監督)文:鷲田康
〇「コーチは何してもいいの。どんなに厳しい練習しても、叱っても、嫌われたって全然問題じゃない。そのかわり、絶対に選手を勝たしてあげること。それだけすればいいの」
 井村雅代(シンクロナイズドスイミング中国代表ヘッドコーチ)文:松原孝臣

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2008年1月19日 (土)

『Sports Graphic Number』695号

表紙:早稲田大学ラグビー部
特集:日本ラグビー総力特集 楕円の流儀。

 表題のとおり、社会人、学生、新旧織り交ぜたラグビーの特集です。
 おもしろくまとめていたのが「ラグビースタイル徹底分類」でした。ワールドカップや日本国内で勇名を馳せた、歴代のチームを取りあげているのですが、「長所:努力と才能のマリアージュ・短所:鉄鋼不況に弱い」「長所:爆発すると優勝・短所:爆発しないことも多い」がいつ頃のどのチームのことか、わかるかたもいるのではないでしょうか。
 ただこの特集には不満もあります。ポジション用語がサッカー並みによく出てくるのですが、それをよく覚えていない者には非常に読みづらいのです。WTBだのHOだのポジションの番号だの、専門用語を理解していない者にとっては、興味が半減してしまいます。この雑誌は専門紙ではなくスポーツ総合誌であるはずなので、編集部にはもうひと工夫してもらいたいものです。

 特集以外では「神の子と呼ばれた理由。」(文:中村計)が、田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)の性格がよくわかっておもしろく読めました。

今号の名言
〇「毎試合が勉強っスよ。いちばん印象に残った試合とか、よく聞かれるんですけど、答えられないですもん。勝った試合でも、反省がない試合なんてないですし」
 田中将大 文:中村計

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2008年1月 9日 (水)

『Sports Graphic Number』694号

表紙:イビチャ・オシム(前日本代表監督)
特集:日本サッカー オシムの刻印

 日本代表監督がイビチャ・オシムから岡田武史に交代したことを受けての特集です。この人選については識者の間では賛否両論のようで、この緊急事態下では最善だいう意見から、彼でいいのか?という疑問まで、幅広い意見があげられていました。  選手の記事では、今となっては「前」も含む海外組として、稲本潤一(アイントラハト・フランクフルト)高原直泰(アイントラハト・フランクフルト→浦和レッドダイヤモンズ)松井大輔(ルマンUC)三都主アレサンドロ(レッドブル・ザルツブルク)そしてナンバーMVPとして中村俊輔(セルティック)が採りあげられるなど、盛りだくさんでした。
 興味深かったのが、浦和レッズのフロントの努力を綴った「アジア制覇の道のり。」(文:小齊秀樹)でした。以前海外まで応援に行ったサポーターを通して、サッカー文化について書いた記事がありましたが、フロントのかたがたもまた、文化の違いと戦っていたことがよくわかりました。

 サッカー以外では、為末大が失敗に終わった世界陸上について、冷静に振り返った「屈辱の夏」(文:吉井妙子)が印象に残りました。

今号の名文
○岡田監督はオシムがやってきたサッカーをよく知っている。選手について知識もある。コーチ陣とのコミュニケーションにも問題がない。チームはスムーズに岡田体制へと移行するだろう。この段階で、「スズキケイタって誰?」から始めなければならない外国人監督とでは、抱えるリスクの面で雲泥の差がある。
 文:清水秀彦(元ベガルタ仙台監督)

今号の名言
〇「過去の日本代表チームが、他の国のチームの模倣をして、ある意味で『行き過ぎた』部分があったために、それを修正しているだけのことです」
 イビチャ・オシム 文:木村元彦

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2007年12月19日 (水)

『Sports Graphic Number』693号

表紙:セスク・ファブレガス(アーセナル)
特集:欧州サッカー・若き支配者たち 新創世記。

 欧州選手権予選が終わったので、そのレビュー中心かと思いきや、むしろアーセナルを中心に欧州で活躍する選手たちを特集していました。
 欧州選手権に関しては、ホームでイタリアに勝てば予選通過だった(負けた)スコットランドと、ボスニア・ヘルツェゴビナに勝てば通過だった(勝った)トルコについて、サポーターを中心に熊崎敬が採りあげています。
 さらにホームでクロアチアに引き分ければ予選を通過できたにもかかわらず敗れた、サッカーの母国イングランドについては、山中忍が記しています。
 選手の記事は若手有望株を中心に扱っていて、おもしろく読めました。

 またクラブワールドカップがらみで、パオロ・マルディーニ(ACミラン)のインタビューが掲載されていました。引退を1年伸ばしても優勝したい、という思いがひしひしと伝わってきました。

 サッカー以外では、塚原直也を採りあげたナンバーノンフィクション(文:矢内由美子)が、偉大な親との葛藤と、彼の体操にかける思いが伝わってきて読み応えがありました。

今号の名言
〇「ジュリー、私は19歳のブッフォンが欲しい。今の姿になる前のブッフォン。若いころの彼を君が探し出して育てたときに、私は世界一のゴールキーパーをこの手に持つことができる。それが君のここでの仕事だ」
 アーセナルGPコーチに就任したジュリー・ペイトンに アーセン・ベンゲル(アーセナル監督)文:田村修一
〇「昨季のCLを制した夜、つまり日本へのパスを手にした夜、僕はすぐにトヨタカップのことを考えた。スクデッドを穫り、翌年のCLを制し、そこで初めて切符を手にする。2年間に及ぶ戦いを経なければいけない、その難しさがトヨタカップの魅力なんだ」
 パオロ・マルディーニ 文:アラン・トネッティ 訳:宮崎隆司

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2007年12月 5日 (水)

『Sports Graphic Number』692号

表紙:田中マルクス闘莉王(浦和レッドダイヤモンズ)
特集:Jサッカー特別編集 我らの証。

 野球に続くFinal特集です。といっても事実上、アジアチャンピオンズリーグを獲った浦和特集で、正直ちょっとくどかったです。J1で浦和が優勝すると思ってそうしたのか、商業的にそうしたのか、鹿島の優勝を見越して浦和をやっとこうと思ったのかはわかりませんが。
 ただACLの記事に関しては、浦和サポーターがイラン人に与えた影響についての記事(文:熊崎敬)が印象に残りました。  他には大久保嘉人(ヴィッセル神戸)が変わった、という内容の記事(文:畠山直毅)が、彼の性格が伝わってきておもしろく、また柏レイソルと石崎信弘監督について書いた城島充の記事も、読ませました。

今号の名文
〇「失点したのに、なんで歌ってられるんだ」>隣のイラン人が眉をひそめた。>「俺たちは失点したら、文句だらけで応援なんかやめちまう。どうして日本人は……」>日本人の僕には、彼らを納得させる言葉が見つからない。
 イスファハンでのセパハンvs.浦和レッドダイヤモンズのスタンドにて 文:熊崎敬
○ベテランのカメラマンから興味深い話を聞いた。ダルビッシュの投球フォームをきちんとカメラに収めるのはむずかしいというのだ。>「腕が体の前に出てくるのがほかの投手よりもずっと遅いので、普通の感覚でシャッターを切ると、全然タイミングが合わない」
 ダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ)について 文:阿部珠樹

今号の名言
〇「わしは常勝軍団なんて作りとうない。だって常に勝ってたら面白くないでしょう。サポーターには叱られるかもしれんけど、たまに勝つから面白い(笑)。
 石崎信弘 文:城島充

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2007年11月13日 (火)

『Sports Graphic Number』691号

表紙:谷繁元信(中日ドラゴンズ)
特集:日本シリーズ完全詳報 竜の戴冠。

 日本選手権は、中日の4勝1敗に終わりました。そのポイントを、プロOBやスポーツライターが指摘しています。
 伊東勤(前西武ライオンズ監督)や江夏豊(元阪神タイガースほか)は、谷繁元信(中日ドラゴンズ捕手)の健闘を挙げ、阿部珠樹は落合博満(中日ドラゴンズ監督)の、過去と異なる早い仕掛けについて書き、永谷脩は中日投手陣の結束とともに、トレイ・ヒルマン(前北海道ニッポンハムファイターズ監督)が選手権終了前にロイヤルズ入団を決めたことへのわだかまりを記していました。

 今号は特集よりも、それ以外の記事のほうがおもしろく感じました。引退する田中幸雄(北海道ニッポンハムファイターズ)への思いを綴った「東京ドームと田中幸雄と。」(文:えのきどいちろう)、橋本清の藤川球児へのインタビュー、佐藤琢磨について書いた「レースって、これだよ!」(文:今宮雅子)などです。

今号の名言
◦「変化球主体だから、握力がなくなると……。でも、いこうと思えばいけたかな……」
 日本選手権第4戦で8回まで無安打で押さえながら交替したことを振りかえって 山井大介(中日ドラゴンズ)文:永谷脩
◦「引退を決めたピッチャーのストレートを打てなくては本当のホームラン王じゃない。最後に村田というすごい打者に打たれたと、子供たちに自慢できるようなバッターになってほしいね」
 本拠地での引退試合でホームランを打たれた村田修一(横浜ベイスターズ)について 佐々岡真司(前広島東洋カープ)文:永谷脩

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2007年10月31日 (水)

『Sports Graphic Number』690号

表紙:ダルビッシュ有(北海道ニッポンハムファイターズ)
特集:クライマックスシリーズ全詳細 決戦燃ゆ。

 プロ野球日本選手権は、中日ドラゴンズの4連勝に終わりましたが、この号はそれ以前のクライマックスシリーズ(CS)についての特集です。小生は年々野球に対する興味が薄れ、CSから日本選手権まで、ニュースさえまともに見なかったのですが、谷繁元信、中田賢一(以上中日ドラゴンズ)、ダルビッシュ有(千葉ロッテマリーンズ)、成瀬義久(千葉ロッテマリーンズ)についてなど、ナンバーの野球特集はこれまで同様、楽しませてくれました。

今号の名言
◦「できれば3つでと思っていた。タイガース戦もおんなじ。2つでと思っていた。うまくはまりましたね」
 日本選手権を前にして 落合博満(中日ドラゴンズ監督)文:阿部珠樹
◦「これだけの大観衆なら、向こうは自分のピッチングができないと思う。でも(札幌ドームに慣れている)自分はできる」
 パシフィックリーグ クライマックスシリーズ第2ステージ第5戦で相手先発投手の成瀬善久を挑発して ダルビッシュ有 文:中村計
◦「誰ひとりミスしたわけじゃないんですよ。投手も、打者も、走者も、野手も責められるようなプレーは誰ひとりやらなかった。でも、ああいう風に明暗が分かれてしまう。ほんと、不思議ですよ」
 '06年パシフィックリーグのプレーオフ第2戦9回裏2死、セカンドゴロで2塁からホームインしたことについて 森本稀哲(北海道日本ハムファイターズ)文:阿部珠樹

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2007年10月24日 (水)

『Sports Graphic Number』689号

表紙:競走馬(タガノアッシュほか)と騎手
特集:日本競馬の逆襲。

 秋の競馬シーズンを前にした特集です。小生はあまり競馬には興味がないのですが、この特集は楽しめました。
 馬インフルエンザの流行と、そのあおりを受けた「ウォッカ」をはじめとする競走馬の海外遠征の中止。ドバイ首長シェイク・モハメドの率いるダーレー・ジャパンの馬主登録。そして前半不調だった武豊。今年これまで起こった主なできごとを、数編の記事でうまくまとめてありました。
 中で興味を引かれたのが「ノーザンファーム 進化する巨大ブリーダー。」(文:島田明宏)。牧場としてどう企業努力するのか、その仕組みがよくわかりました。

今号の名言
◦「冗談のように、ディープインパクトをつけたら何冠ベイビーになるのかな、といった話をすることはあります」
 繁殖牝馬としてのウォッカについて 谷水雄三(カントリー牧場経営者)文:島田明宏

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2007年10月 8日 (月)

『Sports Graphic Number』688号

表紙:ルイス・ハミルトン(マクラーレン メルセデス)
特集:F1 HUMAN WARS 闘争白書。

 例年どおり、日本GP前のフォーミュラ1特集です。
 昨年は、最後(かもしれなかった)の鈴鹿と最後のミハエル・シューマッハーが主役でした。今年は30年ぶりの富士スピードウェイ(FISCO)と、驚異の新人ルイス・ハミルトンが主役、のはずですが、それにしてはFISCOの記事の扱いが控えめだったような…。
 今年の日本GPは、ポイントトップのハミルトンが優勝を飾り、2位だったチームメイトのフェルナンド・アロンソがリタイアしたため、ますます差がついてしまいました。
 しかし中国GPでは、ハミルトンがまさかの初リタイア。最終戦ブラジルGPを前にしてハミルトン(107ポイント)フェルナンド・アロンソ(マクラーレン メルセデス・103ポイント)キミ・ライコネン(スクーデリア フェラーリ・100ポイント)の3選手に優勝の可能性が残されています。
 そのハミルトンの生い立ちを著した記事(文:坂野徳隆)をはじめとして、彼と不仲説が絶えないアロンソについて(文:今宮雅子)、かつてM・シューマッハーのチームメイトだったエディ・アーバインへのインタビュー(文:アダム・クーパー)、これまでのF1ドライバーどうしのライバル関係について(文:今宮純)など、非常におもしろく読めました。

 特集以外ではプロテニスプレーヤー、杉山愛についてのナンバーノンフィクションの「太陽の孤独」(文:吉村忠弘)に興味をひかれました。伊達公子が引退した後、日本人のトッププレーヤーとして活躍せざるをえなくなった彼女の苦悩と、それを乗り越えた現在が描写されています。

今号の名言
〇「F1で同じパッケージなら、同レベルのドライバーは皆同じ結果を出せる。黒人だから特別に見られて得をしているし、同時に失敗したら『やはり黒人だから』といわれる。それが頑張る上でいいプレッシャーにもなっているのさ」
 マーティン・ハインズ(英国ZIP KART社長)文:赤井邦彦
○「ミハエルと組むまでは、俺は人間があんなに速く走れるもんだとは思わなかった。あるいは、俺がすごく遅かったってことなのかもしれないけど」
 エディ・アーバイン 文:田邊雅之

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2007年9月24日 (月)

『Sports Graphic Number』687号

表紙:ティエリー・アンリ(FCバルセロナ)
特集:欧州異変。

 欧州チャンピオンズリーグの開幕にともなう特集です。今シーズン移籍をしたティエリー・アンリやフェルナンド・トーレス(リバプールFC)ベルント・シュスター(レアル マドリーC.F.監督)を中心に記事が編集されています。内容はあまりマニアックに走ることなく、有力チームをわかりやすく取りあげていて、好感がもてました。
 特集の最後には中村俊輔(セルティックFC)森本貴幸(カターニャ)高原直泰、稲本潤一(アイントラハト フランクフルト)と、日本人選手も採りあげられています。

今号の名文
◦人々をたのしませるために、選手たちはプレーしているのだ。結果良ければすべてよしという考えに私は与しない。そんなテーゼを、私は一度たりとも信じたことはない。
 文:ヨハン・クライフ(元FCバルセロナ監督)
◦この2人はピッチで結果を出して、もう過去の遺物になりつつある「日本人=商売」という”偏見”にとどめを刺してくれるだろう。
 高原直泰と稲本潤一について 文:木崎伸也
◦単なる時差ボケだけでなく、メダル獲得を語り続ける重圧の中での、移動のストレス―こういったものが、狙った試合での爆発力を、選手たちから奪った印象は、否定できないのである。
 海外を転戦後に世界陸上に挑んだ日本人選手について 文:小川勝

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2007年9月10日 (月)

『Sports Graphic Number』686号

表紙:鈴木啓太(浦和レッドダイヤモンズ)
特集:2010年 代表の旅。

 アジアカップとU-20W杯の結果をうけての、まとめの記事が中心です。読みごたえがあったのは、武智幸徳「強者への道。」鼎談「日本代表、2010への提言。」戸塚啓「サイドを制するのは誰だ。」金子達仁「カナダに見た夢。」福田健二について書いた小宮良之「戦い続けるという覚悟。」あたりでしょうか。
 ほかにはナンバーノンフィクションで、松井秀喜(ニューヨーク ヤンキース)の5打席連続敬遠を採りあげた「怪物の涙。」がおもしろかったです。

今号の名文
◦パスをあちこちに通され、そのリズムを断とうとして足を目一杯使わされ、カバーに遅れたら無理なタックルで止めるしかない……。こういう渦を巻き起こせるのは今のところ、アジアでは日本だけだろう。
 サッカーアジアカップのうち3試合で相手に退場者が出たことについて 文:武智幸徳
◦茶髪で、ちょっぴり太めの目立ちたがり屋。だが、見かけとは裏腹だった。デカモリシは繊細な神経の持ち主であり、困ったことに、いつだって物事を深く考えてしまう。
 森島康仁(セレッソ大阪)について 文:熊崎敬
◦このベスト16は、日本サッカー史上初めて、必然として到達したベスト16でもあった。史上初めて、勝つことを夢ではなく現実の目標としてとらえた集団の成果だった。
 U-20ワールドカップ日本代表について 文:金子達仁

今号の名言
◦「アジアカップは勝つことよりも、どうやってサッカーをするかということの追求が多かったですから。ただ勝つだけではなくて、中身を伴って勝つ、と。じゃあ、今度、勝負に徹するときにどうやるのか、というのはありますね。絶対に出てくるはずなんですよ、負けられない戦いってのが」
 中澤祐二(横浜Fマリノス)文:佐藤岳
◦「日本がベスト8に行ったらみんなが驚くけど、ブラジルがベスト4でも誰も驚かない。日本の場合、グループリーグ3戦全敗でも世界は驚かない」
 後藤健生(スポーツライター)
◦「ぼくは心のどこかで、この敬遠をなんらかの形で世間の人たちに証明しなきゃならないと思ってきました。つまり、甲子園で5回も敬遠されるに足るバッターだったというね。いまでも。その気持ちに変わりはありません。そういう意味で、あの20球のボールは、ぼくにとって、とてつもない大きなエネルギーになりました」
 松井秀喜 文:松下茂典

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2007年8月27日 (月)

『Sports Graphic Number』685号

表紙:田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)
特集:その試合が彼らを変えた 熱球物語。

 「江夏の21球」を思い出してください。あの山際淳司の名作がなぜおもしろかったのか、それは素人ではわからないプロの駆け引きの一瞬一瞬を、作者が取材を通じて解き明かしていったことにあると思います。
 今号の特集はその流れに沿ったNumberらしいものになっていて、好感が持てました。ぜひ他のスポーツでもこういう切り口で臨んでいただきたいものです。ただサッカーのライターは、自分が評論家になったつもりの人が多いから、難しいかもしれませんが。

  ナンバーノンフィクションは、浅沢英の「天才の躓き。」天才体操選手、米田功(徳洲会)が、どのようにつまずき、どのように復活しようとしているのかが浮き彫りにされていて、おもしろく読めました。

今号の名文
〇遠藤のアジアカップでのFKを見ていると、ひとりだけ違うメーカーのメトロノームでリズムを取っているように見えた。長いか短いかは知らないが、ともかく相手GKとは一拍ないし半拍ずれるのだ。
 遠藤保仁(ガンバ大阪)について 文:阿部珠樹

今号の名言
〇「今の自分は、まだ変化球ピッチャーです。本格派って、たぶん真っ直ぐのスピードだけで言われていると思うんですよ。だけど実際には中身が伴っていないんで」
 田中将大 文:矢崎良一
〇「もしぼくがもっと上のレベルをめざすのであれば、内野安打の割合は減らしてゆきたい。クリーンヒットや本塁打の割合を多くして、なおかつ200本を打ちたい。(中略)そういう打者になることが相手にとって脅威だからです」
 青木宣親(東京ヤクルトスワローズ)文:阿部珠樹
〇「その時、とんでもなくすごいボールが来た。その時のストレートの勢いは、これまで自分が経験した中で3本の指に入るほどだった。気持ちの乗ったときの松坂大輔や、パ・リーグのセーブ記録を作った時の平井正史よりも上だった」
 '06年9月27日、リーグ1位がかかった試合でのダルビッシュ有について 中嶋聡(北海道日本ハムファイターズ)文:永谷脩
〇「天才なんて、くだらないと思います。そういう言葉があるから、僕みたいに勘違いする人間も出てくるんだと思います。>でも、失敗して良かったとも思っています。あのまま、すんなりとシドニーへ行っていたら、もっと大きな勘違いをして、人生、狂っていたような気もしますから」
 米田功 文:浅沢英

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2007年8月13日 (月)

『Sports Graphic Number』684号

表紙:中澤佑二(横浜Fマリノス)
特集:日本代表 屈辱のアジア杯 彼らは何を掴んだか。

 アジアカップはイラクがサウジアラビアを破って優勝し、日本は韓国に敗れて4位に終わりました。この結果を受けた記事が今号には掲載されていますが、ワールドカップ予選へ向けての予行として前向きに評価したものもあれば、選手の起用法などを批判したものもありました。ひとつの結果が出たからではありますが、以前のようにオシム礼賛一辺倒ではなくなっていることが、非常に健全に思えます。
 3年前のアジアカップでは、優勝したばっかりに、またその後のコンフェデレーションズカップでブラジル相手に健闘したばっかりに、日本全体が慢心してしまいました。このことを思えば、今回の結果を小生は前向きにとらえるべきだと思います。
 今号の記事内容は、アジアカップの総括と主力選手のインタビュー、大健闘だったU-20日本代表について、反町康治U-22監督のインタビュー、と、前号とちがいすっきりまとまっています。

今号の名文
〇アジアカップ優勝を逃したのは残念だが、ワールドカップへの準備として考えれば有意義なトレーニングができた。課題がはっきりと示されたという意味で、サウジアラビア相手の敗戦もプラスに捉えるしかない。
 文:後藤健生
〇オシムは、この大一番を勝つためにベテランを頼った。彼は就任以来、多くの選手を招集してきたが、アジアカップという真剣勝負の場で、代表の選手層が厚くはなっていないということが明らかになってきた。
 準々決勝のオーストラリア戦を終えて 文:熊崎敬

今号の名言
〇「自分たちのサッカーを封じられたときに必要なのは、個人のアイディア。確かにチームとしての戦い方もある。でも、それプラス個人のスタイルを出すこと。チームのサッカーに縛られすぎて、自分のストロングポイントを出しきれていない選手もいる」
 遠藤保仁(ガンバ大阪)文:寺野典子
〇「日本のサッカーは美しいが、(勝ちきるためには)何かが足りなかった」
 イビチャ・オシム 文:田村修一

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2007年7月27日 (金)

『Sports Graphic Number』683号

表紙:デイビッド・ベッカム(ロサンゼルス ギャラクシー)
特集:世界蹴球最前線。

 ナンバーがチャンピオンズリーグを取りあげたときは、おもしろくないことが多い、と小生はよく書いていますが、今号はその「おもしろくない病」にかかっています。なぜおもしろくないか考えてみました。理由は2つあります。

 特集を「世界蹴球最前線」と銘打つかぎりは、世界のサッカーを取り扱わなければなりません。ところが暦では、南米選手権が佳境、アジアカップは真っ最中で、代表の試合以外はまとめにくい状況です。そこで、まだ予選だけれどそろそろ佳境だしベッカムも復帰したから、ということで欧州選手権を中心に編集したのでしょう。
 しかし「世界」と銘打っている以上、特定の国だけを取りあげるわけにはいかないので、複数の強い国を中心に編集することになります。すると、おのずと焦点がぼやけてきます。こうして何をまとめたのかわかりずらい、おもしろくない特集のできあがり、となります。
 ベッカムの記事ひとつにしても、こぼればなし的な記事がひとつあるだけで、表紙を見て即購入した彼のファンがかわいそうです。

 もうひとつは記事の書きかたです。例えば特定の選手を取りあげる場合、その選手を読者があらかじめ知っているかどうかによって、書きかたが変わると思います。今号の記事でいえば、たとえばベッカムについてこの選手がどんな選手なのか、説明を要する読者は少ないでしょう。
 ではサミール・ナスリー(オランピック ドゥ マルセイユ)について、今現在どれくらいの読者が関心を持っているのでしょう?フランスを取りあげるのに、彼の記事だけで埋めてしまうのは、あきらかに無理があります。タイトルに国をもってくるなら、ポルトガルやブラジルについて書かれた記事が、望ましいように思うのですが。

 小生の知りあいが、ナンバーはサッカー専門誌だと思っていた、と言っていました。この時期、世界各地ではテニス、ゴルフ、自転車ロードレース、ヨットなどで最高峰の大会があり、日本ではアメリカンフットボールの世界選手権があった中、あえてサッカーを特集する必要があったのでしょうか。しかも次号での特集はサッカーのアジアカップなのです。このへん、編集部にはもっと考えてもらいたいものです。

今号の名言
◦「ポルトガル人がみんな代表を誇りに感じ始めている。これでもしポルトガルが大きな大会で優勝でもしたら、スコラーリは神様に祭り上げられることだろう」
 ジョセ・カエターノ(スポーツ紙ア・ボーラ記者)文:竹澤哲
◦「セレソンの監督というのは、問題が起こらない日がない。やることなすこと問題になる。たとえば選手のポジションを変えた。問題になる。ある選手を選ばなかった。問題になる。背番号を決めた。問題になる。何をやっても論争だ」
 ドゥンガ(ブラジル代表監督)文:藤原清美

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2007年7月 9日 (月)

『Sports Graphic Number』682号

表紙:イビチャ・オシム(サッカー日本代表監督)
特集:オシムはアジアを制するか。

 すでにサッカーのアジアカップは始まっていますが、それに挑む、イビチャ・オシム監督率いる日本代表の特集号です。アジアカップの注目点がよくわかる内容になっています。
 取材された選手も、中村俊輔(セルティックFC)川口能活(ジュビロ磐田)遠藤保仁(ガンバ大阪)高原直泰(アイントラハト・フランクフルト)阿部勇樹(浦和レッドダイヤモンズ)鈴木啓太(浦和レッドダイヤモンズ)中田浩二(FCバーゼル)そして中山雅史(ジュビロ磐田)とバラエティに富んでいます。
 特に高原がオシムに請われて招請されたこと、今は同い年のチームメイト、阿部と鈴木が高校のころから影響しあっていたことなどは、おもしろく読めました。

今号の名文
◦オシムさんは、よく「水を運ぶ人」という表現を使っていますけど、では運んだ水をどうするのでしょう。飲む? それとも撒きますか? 正解は「家を建てる」なんです。
 ゼムノビッチ・ズドラヴコ(千葉県サッカー協会テクニカルアドバイザー)のことば 文:西部謙司
◦イビチャ・オシム監督のチームには時間がない。準備は十分でない。それでも僕は、どこか楽観的なところがある。過去2大会を知る選手たちがいるのだ。勝ち上がっていくためには何が必要なのかを、彼らがチームに浸透させていくことを期待している。
 アジアカップに臨む日本代表について 文:戸塚啓

今号の名言
◦「かりに現時点で色々なことを言われているとしても、正しい方向へ進んでいると僕は思う。1本の太い軸を植えつけさせている、という気がします」
 いまの日本代表について 川口能活(ジュビロ磐田)文:戸塚啓
◦「同年代だから、阿部は近くを走ってる。アイツの方が少し前を走ってるのが見えてたから、『オレも頑張ろう』って思って走ってた。でも、道は平行してるけど違うコースで、同じ道ではない。そんな感じなんですよね」
 阿部勇樹と自分について 鈴木啓太 文:小齊秀樹
◦「上手い人だったら一発でいいんですよ。質の良い動き、精度の高いプレーで、一発でゴールは取れるんでしょうけど、僕は下手だから、その人に勝つにはどうしたらいいか、上手いディフェンスに勝つには何をすべきかと考えた時に、10本行って10本ダメでも、11本目にいいボールが来るかもしれない。その時に諦めていて、後で『行っていれば良かった』と思いたくないんです」
 中山雅史(ジュビロ磐田)文:吉井妙子

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2007年6月26日 (火)

『Sports Graphic Number』681号

表紙:アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
特集:総合格闘技“PRIDE後”の世界。

 たびたび書いていますが、小生は総合格闘技(MMAと言わなければいけないらしい)に興味がありません。ゆえに特集記事について触れるのは避けたいと思います。

 まずはサッカー日本代表。キリンカップを採りあげた「オシム采配への疑問。」(文:山内雄司)です。イビチャ・オシム監督は「カミカゼシステム」の名の元に、コンディションのよくなかった稲本潤一(アイントラハト・フランクフルト)
、中田浩二(FCバーゼル)をあえてコロンビア戦の前半に起用しました。それがうまくいかないと見ると、後半は羽生直剛(ジェフユナイテッド千葉)、今野泰幸(FC東京)を投入することで選手の動きを活性化させました。
 ここで筆者は、1,稲本、中田をスケープゴートにすることで「走るサッカー」の正当性をアピールした。2,コロンビアのコンディションのよかった前半の、シミュレーションに適した貴重な時間をむだに使った。という2つの点について批判しています。これまで「オシムには批判も必要だ」との論調こそありましたが、ここまで具体的に採りあげた文章は初めて読んだので、おもしろく読めました。

 それからグルノーブル・フット38から大分トリニータに復帰した梅崎司の記事(文:佐藤俊)で、彼が試合に出られなくなった理由が記されています。GMに日本人が就任し、監督やスタッフが入れ替わったのを契機にスターティングメンバーを外されたそうです。その日本人がだれかは、この雑誌の679号を読んでるかたはおわかりのとおりですが、その人物、祖母井秀隆の、監督の選びかたについての記事が、巻末「SCORE CARD」にあったのには笑えました(文:木崎伸也)。

今号の名文
◦プロ転向はおそらく高校3年の秋になる。それまではツアー参加を最低限に抑えるべきではないか。この素材を生かすも殺すもゴルフ界の良識に懸かっている。
 石川遼(杉並学院高校)について 文:雨宮圭吾

今号の名言
◦「ホントは、できるチームやと思うんです。なのに、全体的になんて言うか……、心が弱いんかなぁ。どこかで気が抜ける部分が出てくる。(中略)できないときは、まったくできない。上と下の差が激しすぎて、普通がないんです」
 U-20日本代表について 柏木陽介(サンフレッチェ広島)

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2007年6月14日 (木)

『Sports Graphic Number』680号

表紙:スーパーアグリF1チーム
特集:スーパーアグリ主義。

 F1第6戦カナダグランプリ決勝は、大クラッシュしたロバート・クビサ(BMW・ザウバー)をはじめ、22台中10台がチェッカーを受けられない中、新人のルイス・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)がポール・トゥ・フィニッシュを飾り初優勝。スーパーアグリF1の佐藤琢磨は最後の3週でラルフ・シューマッハー(トヨタ・レーシング)、昨年のチャンピオン、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・メルセデス)を抜き6位入賞を飾りました。

 そのスーパー・アグリの特集が、今号には掲載されています。図らずも取材を行ったのが、佐藤が入賞してチーム初ポイントを稼いだ、第4戦スペイングランプリの前後だったのは、きっと嬉しい誤算だったでしょう。
 内容は鈴木阿久里代表や佐藤、アンソニー・デビットソンのほか、チームスタッフを採りあげています。スペインでの入賞の2週間前から1週間、鈴木阿久里代表が腸閉塞で入院していたことは、記事で初めて知りました。
 その他今年のF1のトップ4、ハミルトン、アロンソ、キミ・ライコネン、フェリペ・マッサを採りあげ、今年のF1サーカスの展望を占っています。

 特集以外で注目は2編、ナンバーノンフィクションで高川武将が書いた「サイレントK」と、佐藤祥子の「栃東大裕」です。
 「サイレントK」とは中日ドラゴンズの投手、石井裕也のことで、彼が生まれたときからの難聴で、いかにして健常者にはない苦労を重ね、プロ野球の投手になったか、現状はどうなのかが書かれています。
 引退した大関、栃東については、小兵力士がいかにけがを克服し、研究を重ねて日々土俵に上がったかがよくわかりました。

今号の名文
◦ー聞こえるほうが良かったとは思わない?>「思わないです。聞こえないほうがよかった」>ーそれは、どうして?>「頑張れるから」>ー何のために、頑張るの?>石井は少し考えてから、毅然と言った。>「親のためです。今でもメールをくれて、小さいときからずっと支えてくれた。好きな野球をやらせてくれて、勇気をもたせてくれたから……」
 石井裕也 文:高川武将

今号の名言
◦「僕はいつも、全部好きなようにやってやっていいって言ってるからね。ぼくがあなたたちを選んで、あなたたちとやっていくって決めたんだから、任せるよって」
 鈴木阿久里 文:今宮雅子
◦「2004年には本当に優勝が見えて走ってたけど、ベストを尽くす気持ちはあの時と同じ。来るべき時が来て、しっかりと環境が整った時には頂点を狙いたい。その時に、自分の中で1カ所でも落ち度がないように準備していたい」
 佐藤琢磨 文:今宮雅子
◦「今シーズン、彼らが再びポイントすることはもうないだろうからね。だって、想像してごらんよ、前年のクルマを進化させただけのスーパーアグリに、完全なる新車で戦っているわれわれが、もうこれ以上、負けることは許されないんだから!!」
 スペイングランプリを終えて パット・シモンズ(ルノー エンジニアリング・エグゼクティブディレクター)文:尾張正博
◦「マクラーレンとしての理想は、アロンソがタイトルを獲得して、ルイスがマクラーレンの次代を担うドライバーに成長してくれることだ」
 マーティン・ウィットマシュー(マクラーレン マネージング・ディレクター)文:赤井邦彦
◦「土俵に上がる前から勝負は始まってるんですよ。相手の心理が顔色を見ると分かる。(中略)ただ漫然と仕切って、塩撒いてるわけじゃない」
 栃東大裕 文:佐藤祥子

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2007年6月 7日 (木)

『Sports Graphic Number』679号

表紙:イビチャ・オシム
特集:日本代表の論点 オシムに問う。

 キリンカップサッカーで、日本はモンテネグロに勝ち、コロンビアに引き分けましたが、この両試合でイビチャ・オシム日本代表監督は、欧州で活躍する中村俊輔(セルティックFC)高原直泰(アイントラハト・フランクフルト)中田浩二(FCバーゼル)稲本潤一(アイントラハト・フランクフルト)を招集起用しました。この号が出たのはそれ以前ですが、この特集では小野伸二(浦和レッドダイヤモンズ)松井大輔(ル・マンUC)久保竜彦(横浜FC)らを取りあげて、代表にだれを招集すべきか、おのおのが代表にどんな気持ちを持っているのかを記しています。
 「蹴球記者大アンケート メディアは代表をこう見ている。」では新聞社をはじめとする活字メディアの記者が、オシムの代表を採点しています。多くの記者が70点以上をつけ、低い点をつけている記者もよく文を読んでみると、オシムを全面否定しているわけではないようです。「最も印象的なオシムの言葉」の問いに多くあげられていたのが、昨年8月の「私は新しい井戸を掘らないとは言っていない。古い井戸でない選手も試してみると言った。だから自分の発言に縛られるのは嫌いだ」でしたが、この発言を否定的にとらえる記者と、肯定的にとらえる記者がいたのは興味深かったです。
 そしてなんといっても嬉しかったのが、オシムを市原に呼んだ男、祖母井秀隆を採りあげたことです(文:木村元彦)。現職のグルノーブルGMのことから始まり、オシムとの交流についていろいろ触れており、よくぞ取材してくれたと感激しながら読みました。
 特集記事以外で目についたのが、巻末のSCORE CARDに載っていた別府史之(ディスカバリー・チャンネル)の記事でした(文:森高多美子)。ツール・ド・ロマンディ第3ステージでの2位、という内容よりも、自転車ロードレースが久しぶりにNumberで採りあげられたことに驚きを感じました。もちろん別府の活躍がすばらしかったのは言うまでもありませんが、CS放送などのおかげで自転車の記事が採用されやすくなった、とも言えるように思います。

今号の名文
◦ーオシム監督から、帰ってこいとは言われないですか。お前も入れって言わないですか。>「いえいえ、逆にアジアカップで負けたら俺はグルノーブルに行くからって言うたんです(笑)」
 祖母井秀隆に対するイビチャ・オシムの回答 文:木村元彦

今号の名言
◦「サッカーを知ってくると色々と見えてくるし、小野はもともと見える人間だから、合わせることができちゃう。でもチームに合わせることばかりを考えて自分の技量の3分の1しか出せなかったら、それはいいことではないですよね」
 風間八宏 文:戸塚啓

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2007年5月22日 (火)

『Sports Graphic Number』678号

表紙:カカ(ACミラン)
特集:THE EUROPEAN CLIMAX 蹴球戦略論。

 いつもチャンピオンズリーグを採りあげる回は、あまりおもしろくないのですが、今回は監督をメインに採りあげた特集で、なんとかフォローした感じです。おもしろかった記事は、西部謙司のCL総括、クリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター ユナイテッド) について(文:マーティン・ファイン 翻訳:田邊雅之)、アンドレア・ピルロ(ACミラン)が自らのクラブを冷静に振りかえった「僕らにはカカがいる」(インタビュー:クリスティアーノ・ルイウ 翻訳・構成:宮崎隆司)と、小生がバレンシア贔屓なので、ラファエル・ベニテス(リバプール監督/文:ドミニク・ファイフィールド 翻訳:山田智晶)とキケ・フローレス(バレンシアCF監督/文:木崎伸也)あたりでしょうか。

 CL以外では、アウェイでの上海申花戦でおとなしかった浦和サポーターを書いた杉山茂樹の記事がおもしろかったです。小生もバレンシアで、堂々とユニフォームを着ておたけびをあげるアンデルレヒト(ベルギー)サポーターを見ているだけに、競技場内で初めて赤い服に着替えるひとたちが、気を使いすぎているように思えました。

 最後に単独世界一周ヨットレース「Five Oceans」に挑んだ白石康次郎についての連載(文:矢部洋一)が最終回でした。たまたま先日CS放送でこのレースの一部を見ることができたのですが、参加した選手の中には、暴風雨に対応できなかったり、燃料タンクが破損して食料まで汚損して緊急に陸に上がらなければならなくなったり、まさに命がけで悪戦苦闘していました。そんな中最新鋭のヨットで参加した他チームをよそに、中古のヨットで2位を勝ちとった功績は偉大だと思います。

今号の名文
◦普通のドリブラーはボールを足元に置きたがるが、ロナウドは逆に、取れそうで取れない微妙な場所にわざと置いておく。相手がつっかけてくればフェイントで軽くかわし、突っ込んでこなければそのままトリックやスピードで抜く。従来のトリックにこのような独特の感覚が加わったのだから、まさに無敵である。
 今年のクリスティアーノ・ロナウドについて 文:マーティン・ファイン
◦彼らには共通した資質もある>・いい選手を”ブランド”になるまえに見出す能力。>・スターたちと一緒に働いていく気概(二流は三流を雇うという諺もあるとおり)。>選手を説得して自分に従わせる能力。>選手たちの具える最高の素質を引き出してやる戦術。
 CL4強レベルの監督が具えている資質について 文:サイモン・クーパー

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2007年5月 7日 (月)

『Sports Graphic Number』677号

表紙:ダルビッシュ有(北海道日本ハムファイターズ)
特集:御意見無用の野球魂。

 2号続けての野球特集、今号はJPBです。印象としては、おもしろい記事もあったけれど、いまひとつ決定打に欠ける、といったところでしょうか。
 その中ではダルビッシュ有(文:阿部珠樹)藤川球児(阪神タイガース/インタビュー:橋本清)黒田博樹(広島東洋カープ/文:室積光)の記事と、公私にわたる個性的な選手を集めた「ギャラリー・ザ・魂」のコーナーが興味深く読めました。

 特集以外では、浅田真央(中京大中京高)のインタビュー(文:宇都宮直子)で、世界選手権のフリースケーティングの日の、演技終了後、キス&クライで、総合で安藤美姫に抜かれたときに、流した3回の涙について触れていました。敗れたショックからすぐに立ち直り、表彰式で待つ観客のことまで考えていた(アマチュアですが)プロ根性には敬服します。かつて安藤は「真央にはかなわない」と誌上で語っていましたが、この中継録画を見ていたときに小生は、今回は負けたけれども次回からは浅田真央の時代が来るのではないか、という印象を持ちました。

今号の名文
◦純粋に野球のキャリアだけを見てみると、ダルビッシュは日本野球の保守本流を進んできた。(中略)>モデルの皮を被った坊主頭の高校球児。>西アジアの乾燥した熱波ではなく、しっとり湿気を含んだ東アジア的熱気の中で育ってきた選手なのだ。
 文:阿部珠樹
◦「野球で泣いたことがない」と豪語する田中がついに泣いたか?そう思ったが、本人に確認すると田中はこう口をとがらせた。>「おもしろく書きたかっただけでしょ。ドームで暑くて、タオルで汗、ふいてただけなんで」>映像でチェックするとそう言う割には目元ばかりをぬぐっている。こみ上げてくるものをすんでの所で抑えている、そんな風にも見えた。
 田中将大(東北楽天ゴールデンイーグルス)が3月29日のソフトバンク戦でのプロ初登板で6失点したことについて 文:中村計
◦私は黒田の恵まれた肉体と強い心は両親から受け継いだものだと信じる。そして黒田自身と話すまでは、その惚れ惚れするような体躯を見て、プロ野球選手は「体技心」だと考えた。だが、黒田と対話したあとで、やはり「心技体」なのだと知った。
 文:室積光

今号の名言
◦「今、バットとグローブ持って遊んでる子ってあんまり見かけないでしょ。だから僕は小っちゃい子供がボクもやってみたいと思うようなプレーをして、野球を広めていきたいんです」
 中村紀洋(中日ドラゴンズ) 文:藤木TDC
◦「野球ですから2,3点は取られるかもしれないし、取ってもくれる。だからとにかく完璧になんて考えずに、2,3点で抑えておけばなんとかなるって考えます。1年を通して見れば、完封できる試合なんて圧倒的に少ないんですから」
 斉藤和巳(福岡ソフトバンクホークス) 文:阿部珠樹
◦「でも、真央、年々涙もろくなるね。年を取ったのかなあ。どうしてだと思う?」
 浅田真央 文:宇都宮直子

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2007年4月23日 (月)

『Sports Graphic Number』676号

表紙:松坂大輔(ボストン レッドソックス)
特集:メジャーを生きる。

 メジャーリーグが開幕し、松坂も井川(ニューヨーク ヤンキース)も無事勝ち星をあげました。この号は松坂の初勝利についての記事から始まります(文:吉井妙子)。TVを見ただけではわからないもので、松坂はメディアからのプレッシャー、摂氏2.2度の寒さだけでなく、日本人に厳しい主審、という「3重苦」の中で、あの勝利を勝ちとったのだそうです。また日本で未経験の寒さの中で5回表に、レフト前ヒットを打たせ、ライトフライに打ち取り、センター前にヒットを打たせ、結局0点で抑えることで、外野手の体を暖めさせていたのだそうです。彼の度胸と投球技術には敬服するばかりです。
 また松坂が有名にした?ジャイロボールですが、鷲田康の記事でようやくどのようなものか理解できました。要するにアメリカンフットボールの球を投げるときに、突きでた部分が前後になるように安定させるため与える回転が、ジャイロボールの回転になるようで、サイドスローピッチャーが投げやすいそうです。ただオーバーハンドピッチャーがジャイロボールを投げたことはあっても操った例はなく、松坂にその期待がかかる、ということのようです。
 ほかにもイチロー(シアトル マリナーズ)のフリーエージェントに対する思い、城島健司(シアトル マリナーズ)の投手陣とのコミュニケーション、田口壮(セントルイス カージナルス)の渡米以来の苦労などが綴られています。

 特集以外ではナンバーノンフィクション、高橋秀実の「弱者の兵法。」が白眉でした。進学校で知られる開成高校の、野球部の戦いかたが書かれているのですが、その考えかたが、高校野球で常識とされていることの逆をいっているにもかかわらず、極めて理論的であることが大変おもしろかったです。

今号の名言
◦「ロイヤルズ戦を見る限り、バリテックは松坂君を変化球投手として他のチームに印象付けようとしているように見えるのだ。このままのスタイルで行くのか、それともある試合ではガラッと投球スタイルを変えるのか。その変化を見るのも面白そうだ」
 バリテック(ボストン レッドソックス捕手)のリードについて 長谷川滋利 文:生島淳
◦「打撃は打順が回ってくれば必ず発揮する機会があります。しかし守備で各ポジションの選手が1試合で処理する打球は大体3〜8回です。そのうち猛烈な守 備練習の成果が生かされる打球がいくつあるでしょうか(中略)1試合で1つあるかどうかの難しい打球のために、 少ない練習時間の大半を割くわけにはいかないんです」
 青木秀憲(開成高校野球部監督)文:高橋秀実